書評:舞城王太郎「煙か土か食い物か」~ドライブ感?
c0072240_7345650.jpg   私は、権威に弱い。そして、ミステリ小説が好きだ。そこで、舞城王太郎である。
  メフィスト賞を受賞してのデビューはバリバリのミステリ作家であり、芥川賞の候補になったという経歴はベラボウな権威である。そこで、第19回メフィスト賞受賞の「煙か土か食い物か」(講談社文庫)を読んでみた。
うーん。ミステリとしては・・・。ぶっちゃけ放言すると、「認められねえな、けっ!」って感じだ。トンデモ・ミステリだな。ばかやろう!って放り投げたいぞ。蘇部健一「6枚のとんかつ」(講談社文庫)を髣髴させるナゲステ・ミステリの再来、と言ったら言い過ぎか?
  
  ところがどっこい。純文学的側面(ってなんだ?教科書教条的に申すと普遍的なテーマを描いた文学的側面ですかね?)から光を照射したところ、「むぅ、後に天下の芥川賞候補となる萌芽は既にしてあらん!」と会得がいったのである。と言いたいのだが・・・、はっきり言って、よくわからん。
  トンデモなミステリから離れて考えると、憎しみ合う家族とその再生がポイントなんでしょうが、ちょっと外しているよ。いや、外しているというか、あまりにベタベタで、厳しい物言いするなら、スベっている。この点に関しては、三文ソープ・オペラと言われても仕方がないだろうなあ、と冷たく思う。むぅ。

  忘れていたけど、ここであらすじ。
  母親が何者かに殴打され意識不明になったとの報を聞いた主人公。急遽サンディエゴの手術 室(彼は腕利きの外科医である)から、一躍勇躍日本に帰り来て、昔馴染みの幼馴染みは、えー、警視庁のキャリアに検事さん、加えてアッシーくんを一同集合させては、犯人探しに注力する、って話でございます。要約すると、地元の同窓生を集めて事件を解決する、という話である。地元「青年」探偵団の活躍話ですわな。
  
  さて、主人公。仲間に恵まれ、女にもてる、喧嘩の腕はたつ。おまけに手術中に吟ずるは、ダンテの「神曲」。しかしながら家族の愛に恵まれず。そんなわけでね、ちょっと甘えん坊。まったくなんて奴だ、けったくそ悪いったらありゃしない。そんな彼が、見事に暴いた事件の真相は?それは読んでのお楽しみ!脱力するぞ、おいっ!

  しかし憎めないんだなあ。いや、モテ主人公ではなくて、この小説が。悪口ばかり書き殴ってきたのだけど、なにか引っかかる。思わせぶりに書くまでもなく、読み始めから読者を引き込むドライブ感だ。意味があるようにみせかけて、本当は意味が無いんじゃないかな?って勘ぐらせるほど、ドライブ感が先行している。著者は、こう迫ってくる。


ああ俺は苦痛に負けそうなんだ。弱気になってる。
何だよ誰かに守られたいって。誰かの胸で眠りたいって。
お前は傷ついた少年か。保護の必要な未成年か。
お乳の吸い足りないママズボーイか。
しゃんとしろこの野郎。目を開けろ。(中略)
ドントビッチアバウトエヴリシング。ドント・ビッチアバウト・エヴリシング!


  こんな一節に出会えただけで、この本を放り捨てるのをやめた。
  本当は、ミステリとかプロットとかどうでもいいんじゃないの?実際、まったく意味なし、考えさせてごめんなさい、エヘヘヘ。ってな確信犯なのではないかしらん。読み終わった後に頭が痒くなる悩ましい小説である。

  なにはともあれ、本作品のドライブ感に影響さてしまった私は、権威に弱く、ミステリが好きで、調子に乗りやすい、そんな人間である。
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by keroyaning | 2005-03-23 07:31 | 書評
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