書評:J・M・バーダマン「ミシシッピ アメリカを生んだ大河」:アメリカを考える~その二
  選挙の夏が終わりましたね。
  「いよいよ二大政党制が始まるぞい!」と喧伝されたのは、小選挙区比例代表制が導入された1994年。おおよそ十年前のこと。
  まだまだ日本では、二大なる実感湧かざる選挙結果になりました。ひるがえって、二大政党が、岸和田だんじり祭りの如くぶつかり、ちょくちょく政権が替わる海の向こうのアメリカについて話を進めてみましょう。

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c0072240_2032596.jpg 先日、紹介したJ・M・バーダマン「ミシシッピ=アメリカを生んだ大河」(講談社選書メチエ)からアメリカを考えてみましょう。本書は、ミシシッピ河口から、地理的に遡る形で、各地域の歴史・文化が記述されています。
  まずは、ジャズ発祥の地、ニューオーリンズから旅路は始まります。少年院を出たばかりの、ルイ・アームストロングが船上にて、コルネットを吹き鳴らし、「鞄(サッチェル)口」=サッチモ、と呼ばれ愛された町です。

  次なる訪問地は、ミシシッピ・デルタです。プランテーションでの過酷な労働に従事する黒人シェアクロッパーたち。「金を稼げばやがて自分の土地を買えるのだという幻想」に胸を膨らませた彼ら。現実は、収穫物を担保にして生活するという、借金地獄。そこで生まれたのがブルース・ミュージック・・・。

  さらに上流に遡るとトム・ソーヤやハックルベリー・フィンが冒険に昂じたセント・ピーターズバーグに到着します。しかし、これは架空の地名であり、作者マークは、ハンニバルにいたので、そこが舞台であると考えられます。<よいこのアニメ広場>「トムソーヤーの冒険」。もう一度観てみたいものです。
 
  そしてそろそろ旅の終点ですが、驚きました。S・フィッツジェラルドの生家、そして初期作品「ジャズ・エイジの物語」をものしたのがセントポールという町だそうで。彼の洗練された作風は、生まれながらの東海岸アイビーリーグだと思っていたのですが、ルーツは、こんなところにあったのですね。
 
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  さて、本書の奥付を見てみると2005年8月10日第一刷発行、と記されています。本国アメリカでの刊行も、2004年刊行の本が参考文献に挙げられているので、04年末から05年初と考えられます(講談社選書メチエ編集部は、原書の刊行年を明記しておくように!)。
  先日述べましたように、2005年8月末、ハリケーン「カトリーナ」が南部を襲い、ニューオーリンズの80%が水没したと伝えられています。非常にタイムリーに刊行された本書ですが、その中で今回の災害を予期したかのような、警鐘が鳴らされていました。

>(ニューオーリンズは)
>毎年のように襲いかかる洪水の危険につねにさらされていることであった。
>(中略)両岸に堤防が完成していた。
>(中略)以来、堤防はますます厚みと高さを増しているが、
>それでも絶対に決壊しないという保障はない。
>(大略)人間は、ダムや閘門や堤防によって物理的にミシシッピを制御しようとしてきた。
>(中略)ミシシッピ川がいまでも人間の支配を峻拒する猛々しい川であることを、
>人は思い知らされるのである。

  ノストラダムス予言には、足をすくわれましたが・・・。
  このたびのハリケーン。現地に居て、メッセージを発する人には、なにか感じるものがあったのだと思います。ガンバレ、ミシシッピ!!ガンバレ、デルタ・ブルース!!
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by keroyaning | 2005-09-13 20:13 | 書評
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